大凶ヒーロー、運び込まれる (1/3)
IN工藤邸with家主and居候。
原作の舞台に足を踏み入れるなんてテンションMAXだ。
連行されるみたいに連れてこられるんじゃなけりゃな!コナン君と赤井さんに両腕をがっしりホールドされてエイリアンみたいに引きずられてきたよ!
あの場所に居たら、誰かに赤井さんが見られかねないということで移動させてもらったわけだが。赤井さんに手づからお茶を淹れてもらってファン涎物必須の展開なわけだが。
なんでか寒気が止まらないよ!なんでかなぁ!?
シルバーブレット二人からひしひしと感じる逃がさねーぞオーラが怖いからかな!!
「そもそもさぁ。どうやってあそこに駆けつけたわけ?」
偶然にたどり着いたとは思えないタイミング。
まるで俺と安室おにーさんとの茶番劇を聞いていたかのような振る舞い。
単純にいつもの大凶ってわけではなさそうだった。
「ポアロに盗聴器を仕掛けたんだ!」
おい、このショタ笑顔で恐ろしいこと言いはじめたぞ。
「安室さんの様子が今日はおかしかったから……仕掛けてる途中で赤井さんに見つかっちゃったんだけどね」
「あれは驚いたな。偶然、ポアロの裏手を通っただけだったんだが……」
あ、そこで俺の大凶が働いてシルバーブレットサンドされることになったのね。
時間差遠隔大凶ってなにそれ新しいな。
「そして安室さんを見張ってたら、お兄さんが来たってわけさ。最初、黒の組織の一員がバーボンに接触しに来たのかと思ったけど……」
「幸いにも俺が君の顔を覚えていた……。
忘れるはずもないがね……。鮮やかに組織の目を欺いて、スコッチを助け出した男のことを……」
「俺は何もしてないよ」
そんなに誉められると照れちゃう。
俺にはスコッチと謎のデッドラインランデブーをかまして、最終的な後始末を赤井さんに丸投げした記憶しかないんだけどな。いや、マジで。
「何もしてないって言うわりにはアフターケアもばっちりすぎない?」
「アフターケア?」
なんのことでしょ。
「良い手を考えたな。彼ならばすぐに、君が安室透の正体を知っている可能性にたどり着くだろう。これで彼も君の正体に迂闊に踏み込めない……。己の身の破滅に繋がりかねないからだ……。
さらに君は己の正体が彼と同じNOCであると臭わせるような発言を残した……」
「……んー…………そんなこと、俺言ったっけ?」
「言うなればこれは『仲間割れ』……。パッソアにあるはずもないNOC疑惑をかけようとしたな?
安室君が目覚めれば、組織からパッソアを保護するために動き出すだろうことも予測して……。パッソアが実際に警察組織に保護されてしまえば、裏切り者であるという嘘が真実味を帯びはじめる。そのぶん、組織は君を過激に追いはじめるだろうがな……」
「………………」
……………………。
「安室さんが困ってたところだよ。お兄さんとパッソアっていう人の関係性……安室さんの持っている手掛かりじゃあ絶対にわかりっこないところを、お兄さんは偽装したんだ……。
そしてミスリードを誘った。スコッチを助け出すために、イカれた殺人鬼に成り済ましたときとおんなじようにね……」
「…………しょーねんとそこのニットのおにーさんは、あの推理を信じてるんだ?」
「信じてるんじゃない。同じ結論に達したんだよ。
ホテルで黒の組織の一員を殺したのはお兄さんじゃなくて、パッソアだ。銃の構え方一つわからないやつが心臓を一発でぶちぬくなんて無理だし……そもそも被害者を殺す理由があったのはパッソアだけだ……」
「理由、ねぇ……」
「ずっと不思議だったんだ…………隣室から移動してた灰皿もそうだけど、犯行現場からUSBメモリがなくなっていたことが……。
たとえ犯人がお兄さんだったとしても、USBを奪う理由はない。組織に喧嘩が売りたいだけなら組織の一員を一人殺しただけで十分だ……」
「殺したついでにデータを奪ったのではなく。データを奪う理由があったかったから、殺した…………。………そういうことだな、ボウヤ?」
「そう……。
パッソアの狙いはそのUSBデータだったんだ。それも組織のやつらに気付かれることなく、こっそりと入手する必要があった……。
だからカーディナルを殺したんだ。わざわざ一度、USBを手渡した上で……」
「ややこしいことをするやつもいるもんだねぇ……」
「お兄さんさ、パッソアがUSBを持っていったことを知ってたんだよね?」
「……………………」
「安室さんに渡した住所……そこに捨てられた車があるはずだ……。
お兄さんを始末しようとして追いかけてきたパッソアから奪った車が……。ホテルから持ち出された証拠品はそこにある……パッソアが奪ったUSBももちろんそこに……」
「……さすがにスティック本体は破壊されてたけどネ。よっぽど中身を誰にも見せたくなかったようで」
「中身はお兄さんも知らない。けど、仲間を殺してまでUSBを壊そうとした理由なら予想がついた……。
だからあんな嘘をついたんだ。パッソアが組織の裏切り者であったかのように思わせる嘘を……。事実は違うってわかっていながら……」
「しょーねんたちみたいに推理なんて高等なモンはできないからさ。ただの勘だよ。
ただ、まあ……仲間を殺してまでデータを奪いたいってのは、つまり、中身自体が知られるとまずいもんだった……ってことだろ。だけど、アイツはデータを入手した本人なんだ。俺だったら渡す前に中身すりかえんのに、って思ったのさ」
「だけどパッソアはそうしなかった。しなかったというよりはできなかったんだ」
「できないってぇのなら、元からデータが空だった……任務に失敗してたくらいしか思い付かなくてさ。
ま、ただの想像だけどね。
単純に、あの冴えねー感じのにーちゃんが組織を裏切れるようなタマじゃなさそうって思っちまったのさ。それよりは、任務に失敗したことを隠蔽しようと暴れまわってるだけだと考えた方がぽかったし。あのこわーい銀髪のおにーさんも短気そうだったしさぁ。失敗を知られたら、殺されでもすんのかな、って」
「…………うん、ただの想像だね。でも、真実がどうあれ、パッソアがあのUSBの中身を隠蔽しようとしたことは事実だ……。
お兄さんはそこに目をつけたんだよね?」
「あわよくば、パッソアが組織の裏切り者であり、君がその協力者であったと誤解させるための布石としてな……。
だから『仲間割れ』であると口にし、安室君ならば意味が理解できると告げた……。同じNOC同士なら、とな」
…………だからシルバーブレット怖いって。
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