大凶ヒーロー、撃ち抜かれる (1/2)



「ねぇ、チョウダンは?」

……………………。
………………………………ほわっつ?

「街中で撃った銃弾がどこにも当たらないなんておかしいよ?」

どちらさまでしょうか。
振り返った先には天使みたいにかわいらしい少年が。
半ズボン、イイね!
神崎君ショタコンじゃないよ、いやほんと!

「……こんな夜遅くにどうしたの、しょーねん」

「そもそもその銃、ゲキテツが動かないようになってるよ」

え、これは俺どうするべきなの。
ジンニキがにょきっと現れたら銃拾って牽制しつつ逃走の一択なんだけど。
ショタ相手に俺はどうすればいいと言うのだ。
ゲキテツなにそれなんの鉄?

「これ?ただの玩具だから気にしないで」

「サイレンサーまでつけて、玩具っていうのは無茶があるんじゃないの、お兄さん」

銃の先端に取り付けられた筒上のなにか。
発砲音をほとんど消してくれる優れものらしいけど、神崎君には正直よくわからない。
だが見た目通り何か物騒なものであることだけはわかった。

「その銃は本物だ。だけど…………」

「だが、見たところ使い物になるような状態ではなさそうだ」

夜の住宅街に響くイイ声。
後ろから何故か普通に赤井さんが現れた。
アッ、サンドされた。
シルバーブレットコンビに前後から挟まれた。
待って、これ俺もシルバーブレットにオセロされちゃう。
赤井さんといいコナン君といい、いったいどっから出てきたの、ねええええええ。ねえ、なんなの?また大凶なの?
二人ともちょっと夜のお散歩してたら偶然神崎君の犯行現場にたどり着いたの?
ってか、まず赤井さん色々と素っぴんじゃねぇか。

「……そういうニットのおにーさんこそ、物騒なもん持ってるね」

変装すらせずに俺に近寄ってきた赤井秀一。手には銃。
怖いから止めていただきたい。
沖矢昴とか言う見た目だけは無害そうな皮はどこに落としてきたんだ。アンタ死んでるんだからちゃんと沖矢さんつけとかないと。沖矢昴外すとただのダークでイケメンで高スペックなスナイパーじゃないですか、やだー……。
……あれ、赤井さん死んでるよね?そういう時間軸だよね?

「おっと……引き金には手をかけないでくれよ。俺も問答無用で人を撃つようなことはしたくないんでね……」

安室おにーさんの横に転がした銃を拾い上げて、咄嗟に赤井秀一に突きつける。
突きつけちゃったよ。やっちまったよ、やっべー。
だけどできたのはそこまで。
自分に向けられた銃口に動けなくなる。
神崎君、イッパンジン。
スナイパー、コワイ。

「もっとも…………引き金を引いたところで、その銃は撃てないだろうがな……」

マジで?
あ、ベルモットおねーさまに頼んで勝手に弾が出ないようにはしてもらったなぁ。
そんとき何か言ってたけど神崎君バカだからよくわかんなかったなぁ。


「撃てるかどうかは、やってみなきゃわかんないんじゃねーの?」

「無理だよ……見ればわかるだろう……」

弾でも詰まってるんの?

「!おい!」

「バッ!バーロー!!いくらセーフティかかってるからって銃口覗くやつがいるか!!」

「……あ、そうなの?」

「その銃、今は引き金すら引けねぇぞ」

「あっ、そ」

ぽいっと銃を投げ捨てる。
セーフティの外し方とか知らねぇ。こんなもんただの棒だ、重い棒。
……いや、警棒代わりには使えるか?

「やっぱりそうか。オメーは、銃が使えない……」

一回り年下の少年にオメー呼ばわり、これ如何に。
きらりと光った眼鏡が怖いぜ。
そして少年の方に目を向けると赤井さんの持ってる銃が死角に入るからめっちゃ怖いぜ。
少年誌の主人公の目の前で人死にとかないよね。あるわけないよな!黒の組織員が目の前で殺されたりとかしなかったもんな!犯人が目の前で焼身自殺事件とかなかったもんな!
…………あれ、なんだろう。急に記憶喪失になりたくなってきたぞ。

「セーフティってのは銃が誤作動しないように設けられた安全装置だよ。最近の拳銃ならリボルバーを除けば、大抵のものにはついてる。セーフティを外すなら、銃身についてるセーフティレバーを動かせばいい……」

「そりゃご親切にどーも」

「そもそも銃の構えかたからしておかしかったんだ……。さっきみたいに低い位置でグリップを握ったら、反動で狙いが大きく反れることになる……。反動で銃身が後方に跳ね上がると、空の薬莢がうまく排出されず動作不良の元にもなるしな……」

低いとこで握ってた自覚すらないんですが。

「へぇ……しょーねん、詳しいんだね」

「基礎的な話だよ、お兄さん。銃の使い方を少しでも習ったことがあるなら知ってることだ……」

あっ。
さすがの神崎君でもこの先の展開読めてきたぞー。
くそー、読みたくないから無視してきたけど避けられそうにないな、これ。

「お兄さんにカーディナルを殺すなんてそもそも無理だったんだ。心臓を一発で撃ち抜けるほどの腕も持ってない……。だけどお兄さんは何故か自分が殺人犯であるかのように各地を煽って……そして姿を消した……」

「やっとここまで食らいついたぞ…………俺のことは覚えているかな?」

「死んだって聞いたけど?そんな無用心に出歩いていーの?」

「ホー……………そこまで知っているとはな」

やべっ、墓穴掘った。

「君には聞きたいことが死ぬほどある……」

「答えてもらうよ、お兄さん」

シルバーブレットコンビこわいよぉ><
安室さん?俺の足元で寝てるぜ?なんて調子乗ったからですか助けて名探偵!

……あ、こいつらが名探偵だったわ。


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