きみをぼくが殺すという覚悟 (7/7)



「そんなおにーさんにヒントくらいはあげようかなァ……これはさ、『仲間割れ』みたいなもんだと思うんだ」

「仲間割れ……?」

「その意味はさぁ……おにーさんならわかると思うよ」

そう言って、男は――俺はポケットからハンカチを取り出す。
ベルモットおねーさまに貰った特性ハンカチだ。サインは入ってないけど幸せのオクスリは染み込ませてある。
スーハースーハーするとおねーさまみたいな幸せの匂いが脳を満たして、意識が天国にイッちゃうぞ☆
大丈夫、死なない死なない。
魂はちゃんと残る。

「おやすみの時間だよ、安室おにーさん」

ぐりぐり踏んでる安室透ことバーボンさんこと降谷君のお口をハンカチでしっかり覆う。
あっ、指先にやわらかい感触。これが噂の王子さまの指先キス……?でもごめんよ、やっぱり俺はストレートなんだ……。
ハンカチから漂う幸せの香りでむぐむぐいいながら暴れてた安室おにーさんもすぐに寝てしまう。
これが俺の魅力というやつだな。
安室さん?俺の下で寝てますが何か?
これからゴミ箱の影に捨てときますが何か?
諸君、これが殺り捨てだ。死んでないけどさ。
隣にベルモットおねーさまの銃も置いといてあげましょうね。こんな物騒なクソ重いだけの棒切れ神崎君いらないからねー。
俺!イズ!一般人!!銃持ってた手が腱鞘炎になりそう!!
ぜんぶ冤罪だったって判明したはずなのになんで猜疑心バリバリの殺意MAXな目で睨んでくるんだろうな!
スコッチ君殺したからか。そうかスコッチ殺人事件の犯人(推定冤罪)だからか。

――ブブブブブ

「うおっ!?」

肩のちからを抜いていたら、急にスマホが震えだした。
真夜中に突然のバイブ音とかホラーだから。
画面に映ってる番号がジンおにーさんのものっぽいのも恐怖だから。
バーボンさんの怖いスマホは電源切って封印しときましょーね。
ピッ、と電源を切ったスマホを安室サンの胸ポケットにしまう。ついでに俺が投げ渡したメモ切れも同じところに。
これで真犯人サンが取っ捕まりますよーに。なむなむ。

「うまく誤魔化されてくれりゃいいけど」

偉大な大女優ベルモットおねーさまから教えられた演技のコツは二つ。
自分の視点を排除して事態を俯瞰で捉えること。
そしてはっきりとした嘘はつかないこと。
それさえ守れば、そのポーカーフェイスで切り抜けられると謎の太鼓判を押されてしまった。
――でも、俺はアドバイスに逆らって一つだけ大きな嘘をついた。
ごめんよパッソなんとか君。君には大迷惑をかけてしまうだろう。
でも俺への迷惑料だとでも思って、キリキリ支払ってくれたまえ。ベルモットおねーさまへの慰謝料も含む。


これで俺は自由だあああああ!









「ねぇ」

………………え?


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