大凶ヒーロー、天使に会う (2/2)
コンコン。
すみませーん、と若い女性の声が扉の向こうから聞こえる。
ありゃ、タイムアップだ。
ジュリおねーさんに不審な男がひっぱたかれた事件の真相に小さな名探偵サンがたどり着いているか知りたかったんだが。
「はーい?」
「すみません、こちらにメガネの子がお邪魔してませんか――ってコナン君!みつけた!!」
「ら、蘭姉ちゃん……」
ひょいっと高校生くらいの女の子に掴まえられるコナン君。
おお。
原作一大カップルが目の前に……!
幼馴染な気になっている女の子の弟になるってどんな感じ?ねえ、どんな感じ?
「おや、またお会いしましたね」
オメーは呼んでねぇぞ、バーボンもとい喫茶店ポアロのイケメン店員安室透。
何故コナン君を背に庇う。
何故そんな目で俺を睨む。
……バレてないよね?
「安室さん?」
「コナン君、ダメだろう?蘭さんが心配していたよ?」
「は、はーい……」
安室さんに庇われたコナン君も戸惑っているみたいだ。
ええと、この時期は……ええと?
緋色編は確か秒読みだったよな?赤井さんは死んだ後?
コナン君と安室さんがお互い探るように見てるってことは、古谷零君はまだ未登場っぽいな。安室透が敵か味方かよくわかっていない時期か。
「どうも、先日ぶりですね」
「どーも。よく一度だけ会った男のこと覚えてるね。記憶力がいいって言われない?」
「ええ、とても……でも、あなたのような方は特に気にかかってしまうんですよ……」
なぜでしょうね、なんてわざとらしく小首をかしげるバーボン君。
男の癖にかわいい動作だな、オイ。俺の胸がドッキドッキしちゃうじゃないか。
恐怖とかプレッシャーでだけど。
これ、バレてません!?いや、揺さぶりかけられてるだけだよね!?
「新手のナンパ?以外と肉食系なんだね」
「そういう意味ではなく……」
「まあいいや。ほらしょーねん。お迎えが来たみたいだぜ?」
「う、うん……」
「その子がお世話になったようですね……」
そのコナン君を俺から隠すとはどういう了見だ。
お世話になった人に殺意MAXの視線を送るのもどういう了見だ。
なんなのバーボン君。スコッチ君を浚っていったサイコキラーさんは川に落ちたか、倉庫で焼けたかで随分前に死んじゃいましたよ?
……ちゃんと死んだことになってるよね?
実は組織にずっと行方を追われてるとかないよね……?
「す、すみません!コナン君がお世話になっちゃって……」
安室君の背中から出てきてペコリと頭を下げる蘭お姉ちゃん。
JKかわいいな。
ダメだ、この発言は変態くさい。
ベルモット風に、蘭ちゃんマジ俺の天使、にしておこう。
……アレ、やっぱり変態くさい?
「いいよ、いいよ。俺も楽しかったし。話の続き、また聞かせてくれよ?」
「あ、うん……またね、神崎お兄ちゃん」
パタンと閉まるドア。
立ち去る三人。
がやがやと三人の話声が遠ざかって行って、俺だけが残される。
「………………」
なんだあの最後の爆弾。
「…………神崎お兄ちゃんって呼ばれた……」
顔面崩壊中。
やっべ、にやけが止まんね。
コナン君怖いけどマジ天使……………!!
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