大凶ヒーロー、ネズミと戯れる (1/2)



公安のネズミ。
正体を言い当てられた途端にスコッチの顔色が変わる。
さっと血の気が引いたまま俺を凝視する。

「……なんの話だ?」

嘘が下手だなぁ。
そんなんでスパイとしてよくやっていけたと思う。
いや、やっていけなかったからバレたのか。

「誤魔化さなくていーよ。誰かにバラすつもりならとっくにそうしてるから」

「………………」

何と言ったらいいのかわからない。
そんな顔をするスコッチ。
悩むこたぁない。俺の好意に甘んじて逃げてくれればいいだけだ。
あとできればここにいる一般人を保護して!冤罪で物理的に抹殺されそうになってる無垢な一般市民を!

「今だってあそこからおにーさんを連れ出してやっただろ?」

「……味方だと言うなら、スマホを返してくれ」

「スマホ?」

「俺のスマホだ」

「ああ……組織の報復対象を増やさないために壊そうとしたアレね」

「…………………見たのか」

スコッチ君の表情がさらに険しくなった。
公安のネズミさんから取り上げたスマホの中には彼の親しい友人や家族の情報がたんまりだ。
組織側の人間にその情報が渡ったら、たちまち謎の殺人事件が頻発することになるだろう。
もちろん被害者はスコッチ君のお友達だ。

「さあ、どーでしょ」

言いつつもスマホを投げ渡す。
当然、中身は見ていない。
でも俺をサイコキラーだと信じ込んでいるスコッチにその真実は見抜けないだろう。警戒心の強い男をこっち側に繋ぎ止めるにはそれだけで十分だ。

「ね、逃げ切れると思う?」

「俺が生きてる限りは追われるだろうな」

「ははーん。じゃあ、おにーさんは死ななきゃね?」

「………………」

やだスコッチ君怖い。
公安怖い。俺が誤解されるような言い方したのが悪いんだけど。
目つきが手負いのネズミなみに凶悪だ。ネズミも獣なのにこう言うと全然怖くないな、おい。

「だーから。逃がしてやるって言ってるでしょ。方法は……今考えてるところだけど」

べ、べべべべつにノープランってわけじゃないんだからね!作戦案みたいなものはちゃんとあるんだから!
プランAは名付けて『緋色作戦』だ。スコッチ君を車ごと焼けてしまったことにしよう作戦とも言う。
パクリ?未来はパクれませんよ?先にやった方がオリジナルだって。
ちなみにプランB以降は今頑張って考えてます。

「俺を逃がして、お前にどんなメリットがあるんだ」

「単純に嬉しいってだけだけど?」

原作ファンとしては涎まき散らしながら狂喜乱舞する案件だ。
スコッチたん救済ルートキターーーーー!とか生スコッチたんhshsprprとか冤罪ワロタwwwwwとか。
最後なんか違うな。

「嬉しいだけで、こんな危険ではた迷惑な真似をするのか」

「ほら、俺ファンだから」

「………………は?」

「ファンだよ、ファン。名探偵の」

「…………………」

「…………………」

スコッチ君が黙り込んでしまった。なんか目が死んでる。
サイコ野郎と思われるのは回避できた気がします。電波とも思われていない気がします。
でもホモ野郎とは思われている気がします。名探偵が好きすぎてついつい組織に首突っ込んだサイコ寄りのBLD主、みたいな。
あ、結局サイコじゃねぇか。

「………それだけ?」

「おにーさんのファンでもあるぜ!」

「………………」

スコッチ君の目がさらに死んだ。
信じてくれてしまっちゃったらしい。これも大凶か、くそう。
キャー、スコッチさんそんな顔もダンディー!!サインちょーだい、いやまじで!帰ったら高く売れそうだしください!!
俺というファンのためにもスコッチ君には長生きしてもらわねばな!名探偵バーボンのためならどんなスリルでも犯しちゃうこの神崎君が助けてあげちゃうぞ!目から汗が出そうだよ、なんでかな!!


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