大凶ヒーロー、追い詰められる (2/3)
その小さな呟きに察する。
ああ、原作前だ。
ちくしょう、これも大凶か。
スマホを握りしめて動揺を露にする名探偵バーボンに俺は飛びかかった。
地面を蹴っても気付かないんだから相当な動揺だ。
まあ、親しい人間からのラスト・メッセージなら無理もないか。
「!」
ようやくバーボン君が顔をあげた時にはもう俺の足は準備万端だった。そのまま好青年君の腹を蹴る。
拳銃をまず取り上げる?そんな器用な真似できるわけないだろ。
大凶舐めんな。そんなことをしたら謎の暴発起こして二人揃って大怪我しかねんぞ。
名探偵を足裏で地面に縫いとめ、その手から滑り落ちた拳銃を拾い上げる。
童顔ベビーフェイスが痛みに歪んだ。
それでもスマホはしっかり握り込んでるから相当だ。目の前に殺人犯(おそらく冤罪)がいることをバーボン君は完全に失念していたとみる。
「はい、形勢逆転。なんか面白いメールでもきた?」
先ほどまで自分に突きつけられていた銃口をハニーフェイスのど真ん中に向けてやる。
正直に言おう。
…………ちょっと楽しい。
断じて殺るつもりはないが、こっちを睨みつつも明らかにびびっているバーボン君が、とても楽しい。
目隠しされた人に無害な電流をビリっと流したくなるようなものだ。人間の本能的なアレだよ、きっと。
「くっ…………」
「彼女から別れようとでも言われた?なんかそんな顔してるぜ」
「どんな顔ですか、それ……」
「死にそうな顔」
ファンのミーハー心がメールを読んでみたいと騒ぐ。だって屈指の名シーンだぞ。
スコッチからバーボンに送られた最後のメールをぜひ読んでみたいと思い、手を出してみる。
ハッとしたようにバーボンはスマホを大事に抱きかかえた。
「見せてみろよ。いいだろ?」
「…………離してください」
「取り上げはしない、って。ただ、おにーさんをそこまで動揺させたメールが気になってさ」
「頼むから離せと言ってるんだ!!今お前に構ってる暇はない!!」
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