大凶は硝煙の香り (2/3)
「本当に殺せないって?」
「データはまだ見つかっていないんだろう」
「…………」
ナンノコトデスカ。
不法侵入罪と殺人罪を犯した上に強盗罪でも追加させる気ですか。データの盗難は情報なんちゃら法とかにひっかかるんだっけ。いやなんでもいいか。
つまり俺は何かもわからないデータ目当てに人殺しをしたクソ野郎になるらしい。やべぇな、俺。サイコじゃん。
「俺を殺せば、お前の欲しいものは手に入らない…………」
「そうだね」
目の前のおにーさんを殺せば俺の欲しいもの(安寧)は手に入らない。
立派な犯罪者になってしまう。あ、データ?そっちはよくわからないのでとりあえずお断りしておきます。
問題は、既に犯罪者になってしまったっぽいことだ。いつの間にこんなことになったんだろうなー?
『アニキ!尾行はされてねぇみたいですぜ!』
外から飛んできた声。
また目撃者が増えてしまうことに動揺した俺の腕が震える。銃口が一瞬下がり、物騒な雰囲気のおにーさんはその隙を見逃さなかった。
見惚れるような鮮やかさで懐から拳銃を取り出し、俺のドタマに向けて弾丸を放つ。
躊躇なし。
こういうのをきっとプロの仕事って言うんだろうか。
咄嗟に床に転がる。
ゴロゴロと転がる俺の後ろを容赦なく追撃の弾が飛んでくる。
今頬にかすった。絶対なんかかすった。
痛いっての。
「アニキ!!今銃声が――」
鈍い音が響いた。
あー……。ほら。かたいもので人の頭とか叩いたことあるかな。そういう時にでるあの音だ。
勢いよく扉が開かれ、恰幅のいいサングラス男が現れる。やはり黒づくめだ。
そして開いた扉にいるおにーさんは前につんのめっている。
「痛ぇな」
おにーさんの頭にぶちあたった扉を見て、思わずつぶやいてしまう。思いっきりおにーさんの後頭部に扉の角が入り込んでいったのを見た。
あれは痛い。
だがラッキーだ。
その場に転がっていたものを適当に掴んで、扉に向かってぶん投げた。
「ウォッカ、お前――ちぃっ!」
文句を言おうとしたおにーさん。だがすぐに俺の動きに気付いて銃を構えなおした。
引き金を引きかけたが――その前に俺のナイススローがその顔面にぶち当たる。
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