大吉でも中吉でも凶でもないアイツはやっぱりやってくる (1/1)



どーも、記憶喪失で身元不明の神崎君です。
あ、聞いて聞いて。
居るかもわからない俺の心を覗いているおねーさまおにーさまがた。
俺の免許証……みつからなかったんだ…………。ベルモットおねーさま、俺の免許証も拾ってくれねぇかな。
国家権力に保護してもらってるものの、肩身が狭いです。高木刑事マジいい人で会う度に神崎君のSAN値ピンチ。神崎君記憶喪失ホントウ。ウソ神崎君イワナイヨー。
この前、つい逃げちゃったけど公安に保護してもらえばよかったかなァ。でも顔会わせるのすげぇ気まずいんだけど。
俺、怪奇現象呼ばわりよ?
サイコキラーと並べてどっちがマシかと言われればどっちも嫌だわ。普通にイケメンのおにーさんって呼んでほしいわ。
え、イケメンのおにーさんが今何してるかって?気になる?イケメンってもっと言って?
イケメンの神崎君、今ねぇ。
死体の目の前に居るの。

「…………どーも、機材運びに来たバイトの神崎でーす」

小声で話しかけてみる。
返事はない。
ただの死体のようだ。
客が入る前の、がらんとしたステージでツンツン頭のロックスターが首から吊り下げられている。
ロックな死に方だぜ。
いや、そんなこと言ってる場合じゃねぇぜ。
俺たぶんこの事件知ってる。この人、ハドなんとかさんでしょ?なんかASACAとか言う曲作ろうとした、黒の組織ホイホイの人でしょ?
しかもこの事件ってさぁ……。

「ま……まだ中には――!」

扉が開く。
扉を開けた警備員のオッサンと目があった。その後ろにみんなのエンジェル蘭ちゃんと小悪魔ギャルっ子園子ちゃんが居る。
一瞬、静まり返る一同。
そして女の悲痛な悲鳴が上がった。

「きゃああああああああ!人殺しいいいいいいい!」

えっ。
ちょっ、まっ。蘭ちゃんそんな殺生な!!

「貴方は――!」

こんにちは安室さん。

「病院での……神崎お兄ちゃん!」

やあコナン君。

「これは、これは……」

はじめまして、赤井さんの外身の沖矢昴さん。

「貴方、どうして……」

榎本さんに変装していても綺麗ですね、ベルモットおねーさま。

神崎だと!?」

誰。
……え、この金髪さん誰?黄色のサングラスとか舐めてんの?パンチ効かせすぎてんの?
なんで冬でもないのに詰め襟の革ジャンなんてスカしたもん着てんの?

「ねぇ、お兄さんってさ」

がしっ、と下から腕を捕まれる。
なんだい、コナン君?お兄さん、無い袖は触れないぞー?

「もしかして…………とーーーっても、運が悪かったりする?」

「ぎくり」

がしっ、と。
反対側を赤井さんのメガ進化系オキヤスバルに――

「君と後で話したいことが……。いや、それよりも、ついに……マジでやらかしたのか……?」

誰。
だからおまえ、誰。なんなのそのサングラス。
俺のシルバーブレットサンド返せよ。
ってか帰れ。お前の正体に若干思い当たる節があるからとっとと帰れ。
公安の奴らがポーカーフェイス苦手なのは知ってるから。お前、安室を見て顔色変えんじゃねーぞ、頼むから。

「どうも、病室で会った以来ですね……」

お前もこのタイミングで話しかけんなポアロの裏口以来ですね安室おにーさん。元気そうで何よりです。

「みなさん、お知り合いですか?それにコナン君も……」

「うん!前、病室で会ったんだ!」

しれっと話を合わせるこのシルバーブレットコンビほんとに怖い。
いいから、俺を早く解放してくれ。殺人犯(冤罪)から解放されたと思ったら今度は第一容疑者か!!

「こ、この男だ!!この男を捕まえろ!こいつが…………!」

「あ、いや……人違い…………」

「こいつが派土を殺したんだ!!」

俺の話を聞いてなんか偉そうなオッサン。やめて、警備員のオッサンも俺を捕まえないで。
あ、その肩まだちょっと事故の後遺症が。いやん、痛い。ほっぺのガーゼは剥がさないで。そこ何も隠してないから。ただの治りにくい摩擦傷だから。

「ちょっと、俺はただ荷物を運びにきただけで」

「死体の居るステージの目の前で随分とのんびりしていらっしゃるんですね……貴方は」

安室テメー、俺になんの恨みが!!
俺は無実だああああああ!

神崎さんって…………」

あ、コナン君とベルモットさまの表情がシンクロしてる。
まばゆいくらいの憐れみの瞳も美しいですベルモットおねーさま!!でもその視線はすごく心に刺ささります、やめて。
神崎、このたびはめでたく第一容疑者デビューしました!!


………カモン名探偵!!安室テメー、俺は犯人じゃねぇって言ってるだろ!!


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