10月31日はこどもの日! (1/1)





「安室せぇんぱぁい」

「気持ち悪い」

「ひどい」

真顔で一刀両断。
このトリプルフェイス俺に冷たい。
ねぇ、最近安室透の皮忘れてません?人はいいけどうさんくさい探偵がフェードアウトして誰か別の人になってません?
具体的に言うと「ふ」からはじまって「ゼロ」で終わる人だけどさ。神崎君に冷たい安室先輩なんてれいじゃなくてゼロだ、このゼロめ!

「先輩が後輩に冷たい!横暴だー!」

「はいはい」

「流したひどい」

「ひどくありませんよ。優しい安室先輩ですよ」

「これはひどい棒読み」

面倒くさがるのも面倒くさそうに適当に相づちを打つ安室先輩。
その隣で一緒に机をふきふきしてる俺こと神崎君。
まあ忙しいんだけどさ。
今日は忙しい日なんだけどさ。
そういう日こそ上げてこうぜ?的な?
レッツパーリィーしようぜ?みたいな?パーリィーだけに?

「「「安室さーん!」」」

チリンとベルが鳴って小さなモンスターが俺たちの城『ポアロ』に侵入してくる。
狼男に魔女に海賊。
これは手強そうだ‥‥‥‥って少年探偵団なんだけどさ。
狼の光彦くんに、ピンクの魔女のあゆみちゃん、そしてでかい海賊帽をかぶった元太君だ。
最近の子達は仮装も凝ってんなぁ。

「ああ、みんないらっしゃい!」

安室先輩が突如気のいい笑みを浮かべた。

「うわっ―――ッ!?」

無言で足を踏まれた。
痛ぇ。
小声で言ったのに。
公安の足踏みマジ痛ぇ。
笑顔のままぎゅむぎゅむするとかドエスかな。ドエスなんだな?

「みなさん、せーのでいきますよっ!」

「うん!」

「おう!」

「せーの!!」

「「「とりっくおあとりーと!」」」

おー、そろったそろった。

「はい、よくできましたー、っと」

ポッケに忍ばせといたお菓子詰め合わせ袋を神崎君の手がぽんっと子供たちの篭の中に放り込む。
わぁーーーー!と歓声があがった。
うまうま棒とかラムネとかしか入ってないんだが、それでもいいらしい。

「今日は米花町を三人でまわるのかな?」

しゃがみこんだ安室先輩こと安室透がニコニコ訪ねると子供たちは大きく頷いた。

「うん!あのねっ、あゆみたちね!次は沖矢さんのとこ行くんだよ!!」

「大きい家だから、ぜったいでっけーもんもらえるぜ!」

「元太君、あそこは沖矢さんじゃなくてエトウさんのおうちですよ」

工藤さんちな。
まだあそこエトウさんち扱いだったんかい。
俺の隣で安室先輩が「沖矢さん」の名前に反応した。相変わらず仲は悪いらしい。

「そっか、彼も今回のイベントに参加してるんだね‥‥‥‥」

その揺るぎない爽やかな笑顔が逆に怖いといって。
と、そんな安室先輩はどうでもいいや。

「およよ、そういや君たち一人、二人足りなくね?」

具体的に言うとミニクールガイコナン君と灰原哀ちゃんがいない。
こういうイベントではいつも一緒なイメージがあったからちょっと不思議な感じだ。

「哀ちゃんは疲れちゃったから博士とお休みしてるの!」

「コナン君は急にどこかに行ってしまいました‥‥‥‥」

事件かな。

「あいつ、ひでーよなー!」

「あはは、コナン君も高校生探偵のお手伝いをしているらしいからね‥‥‥‥」

事件ですよね。
苦笑いの安室先輩と図らずも以心伝心してしまった。やだ、うれしくない。
原作がお休みしてる間も事件に巻き込まれてるコナン君のせいだ。
でも江戸川コナン君天使なので許そうそうしよう。

「んー‥‥‥‥じゃ、神崎おにーさんからみんなに頼み事しちゃおっかな~」

「え、なになに!あゆみたちにできること!」

「どーかなぁ、ちょっと難しいかもな~?」

「ぜぇーーーってぇ、できる!なんたって俺たちは!」

「少年探偵団ですから!!」

おーおー、お目目キラキラ。
かわいいもんだ。
どこぞの汚れきった大人(たぶん)の安室先輩なんかよりとてもかわいい。
神崎君、子供すきー。
‥‥‥‥あ、変な意味じゃなくてね?

「じゃ、お願い事。これ、哀ちゃんとコナン君のぶんのお菓子持っててくれるかな?」

「えー、そんなんでいいのかよ?」

「元太君、食べちゃダメだからね!」

「わ、わかってるって‥‥‥‥」

のんのんと子供たちの前で指を振る。

「ハロウィンの日は悪戯好きの妖精さんがでるんだよ。ちゃーんと守ってないとお菓子がちょちょーと持っていかれちゃう‥‥‥‥かもよ?」

「「「えーーーーーーーー!!!」」」

それからてんやわんやの大騒ぎ。
いやぁ、子供って素直でかわいいねぇ。

「だから迷子にならないように気をつけて行きなよ?知らない人に付いてかない、知らない場所に行かない。妖精さんが来るかもだからね?」

「い、行きません!」

「よーし、じゃあコナン君と哀ちゃんのお菓子守り抜けるかなー?」

「うん、ぜったい届けるね!」

「知らないところと、知らない人に注意すればいいんですよね!」

「ら、らくしょーだっての!」

「そんじゃ、任せたよ少年探偵団」

きらんと子供たちの目が光った。

「「「はーーーーーい!!!」」」

うむ元気の良いことで。

「子供扱い、慣れてるんですね」

子供たちを見送った後に安室先輩にそんなことを言われた。
割とどうでもよさそうに、机をぞうきんで拭きながら言われた。
やだ神崎君の扱いぞんざい……。

「まあね~」

子供にはどちらかというと好かれる方である。

「あ、そだ安室先輩!」

「なんですか」

「俺もとりっ、もがっ」

ちょっ、じかはヤバい、じか投げは喉ヤバいから。詰まるから!
なんか口のなかに直接放り込みやがりましたよこの安室先輩!
ってか最後まで言わせろおおおおおおおお!!
とりっくおあとりっとおおおおおおおおおおおおお!

「君の言動も十分子供ですよ‥‥‥‥」

「ふぁめんふぁ、ふぁいふぁくせいふぁふぁひは」

「食べながら話さない」

舐めんな、大学生はガキだ。
‥‥‥‥‥‥‥‥あ、イチゴ飴おいしい。



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