俺はただカボチャのアルバイトに来ただけなんです (1/1)




映画『ハロウィンの花嫁』軸のお話。
映画本編のネタバレがあります。



カボチャの頭をかぶってお菓子を配るだけの簡単なお仕事。
終わった後はそのまま仮装で渋谷を練り歩けるお得なお仕事。まだハロウィン前だけど、早すぎる浮かれ野郎ぐらい渋谷は優しく受け止めてくれる。ハズ。たぶん。メイビー。

バイト中にいくつかお菓子くすねてコナン君たちに持って行ってあーげよ。
とか考えてたからダメだったんですか?

いざお仕事の時間になって、渋谷のど真ん中でお菓子を配っていた俺こと神崎君。
傍に居たサングラスのいかつそうなお兄さんがもみくちゃにされてることが気になって、大丈夫ですか、なんて声かけようと思って追いかけたのがたぶん大凶の始まりだった。
いや、大凶はいつでも始まってるんだけどさ。
うまーーーくカボチャ頭の集団をかいくぐって、ふらふら歩くお兄さんを追いかける。
俺以外にもお兄さんが気になったバイトが居たのか、カボチャ頭が一人お兄さんに付き添ってた。
控室っぽいところに入っていったからついていく。
そしたらなんか地下っぽいところに入ってたからついて……いく……?
ここら辺であれ?とは思った。
あれれぇ~?おかしいぞぉ~??とは思ったんだよ。
おかしいなぁ、変だなぁ、と思いながら、とりあえず気配を消して忍び歩きでお兄さんたちについていく。
つかず離れずの距離を保って地下までついていったらたどり着いたのは怪しげでぶっとい鉄の扉。そして見張りのカボチャ頭その2!あ、訂正!俺もカボチャ頭だから見張り君はカボチャ頭その3!
俺がその1ね、もちろん。神崎君いつでもオンリーワンだから。

なんか見張りの人と目が合っちゃったので、居て当然、みたいな顔して一緒に中まで入った。
入れたった。
普通に入れた。
そしたらすっごい大量のカボチャ頭いた。地下水路みたいなところで、あちこちに何かの秘密結社メンバーみたいな強そうなカボチャ頭がゴロゴロ。
いやん怖い。
部外者ってバレたら神崎君袋叩きにされちゃいそうなフラグがビンビンよ!
仕方ないので、いかにもメンバーです!って顔で適当なところに並んでおいた。


話を聞いていると、さっきのフラフラしてたサングラスのお兄さんは『マツダ ジンペイ』と言うらしい。
なんだかどっかで聞いた事あるお名前だなぁ。
具体的に言うと漫画原作のどっかで見た事あるなぁ『松田陣平』(バーボンの同期)。
神崎君、純黒辺りで海に飲まれたからよく知らないんだけどもしかして重要人物?あれでも純黒で故人扱いだったような。
あれか?赤井ミラクル秀一みたいな感じで死んだと思った!残念生きてましたァ!!みたいなそう言う?流れ?ワンチャン??
もしかして、俺の知らない原作の続き、目の前でなう!?
これは!是が非でも!見なければ!
もう完全に見守る体勢で、事の成り行きを見守る。俺も秘密結社っぽく腕とかくんどこ。なんかかっこいい感じに。

マツダおにーさん、なんか聞いた事ある声だから、別の人と声優さん同じなのかなぁ、とかぼけーーっと思ってたら暴挙が飛んできた。
誰の暴挙って、俺たちのリーダー(仮)の暴挙だ。
マツダおにーさんと話してたエレノアさんって言うおねーさんがこの集団のリーダーっぽいんだけど。マツダさんに誠意を見せる、とか言って被ってたカボチャも取っちゃったし、名前も本名名乗っちゃったっぽい。
プラーミャとか言う、とっても海外風のお名前の誰かさんに復讐するために、マツダおにーさんの協力が欲しいんだとか。で、ここに居る全員もプラーミャに大事な人を殺されて仇を討ちたい集団なんだとか。
マツダおにーさんに誠意を見せるために、エレノアおねーさんだけじゃなくて、他の奴らも全員カボチャ頭取る流れっぽい。
あ、これ俺も取らなきゃダメですか?
ダメですよね、はい!取らないと逆に目立ちますよね!!
カラン、カラン、と落ちていくカボチャ頭落下ウェーブに乗って俺もさっと脱いで、ポイッと捨てる。
こういうときはね、堂々としてた方がいいんだよ。
堂々としてればお前なら大丈夫ってベルモットおねーさんが言ってた!ちょっと違ったかもしれないけど大体そんな事言ってた!!
バレない、バレない。
隣のイカつそうなお兄さんが誰だお前!?みたいな目でこっち見てるけどバレてない、バレてない。
神崎君は秘密結社のメンバー。腕組んでるかっこいい男。
プラミャー?は敵!猫の一種じゃない!覚えた!!

マツダおにーさんは結局ニセモノだった。
と言うか、俺の知り合いだった。
サングラスと荒っぽい口調で分からなくなってたけど高木刑事でした。どうやらマツダおにーさんと高木刑事は元々顔がそっくりらしい。
で、やっぱりマツダおにーさんはもう亡くなってた。
千葉刑事をエレノアおねーさんたちが拉致して、千葉刑事を返してほしくばマツダを出せと交渉したらしい。マツダおにーさんが亡くなってること、知らなかったんだね。
それで仕方なく、顔が似てる高木刑事が来た、らしい。
話を聞いてる感じ、そう言うことっぽい。
あとね、これね。たぶん原作の何かだね!
バァン!って扉を蹴って秘密結社集会に乗り込んできた佐藤刑事たちと、いつの間にか集会に忍び込んでた名探偵コナン君を見れば明らかだぁね!コナン君のシリアスモードのお顔を見れば、とても大きな事件なのも分かっちゃうね!なんたって神崎君、名探偵コナンの大ファンなので。
佐藤刑事が乗り込んでくるなり、エレノアおねーさんが何か合図をした。腕で首をかっきるような、物騒なジェスチャーだ。
そしたら地下室が真っ暗になった。
バタバタとたくさんの足音が暗闇に響く。逃げてるらしい。ちょうどいいから俺も逃げちゃお。
隣のいかついおにーさんについて行って、脱出。
お空が見えるなり、おにーさんたちからもさっと逃げた。
ミッション・コンプリート!
さっきコナン君と目が合った気がするなんて気のせいだよね神崎君なにもわるいことしてな――ピロンッ。
スマホにメッセージが飛んできた。
わぁい、コナン君からだ!

『なにしてんの』

………短いメッセージなのに、謎の圧がある。
え、ここは正直な神崎君になるべきだよな?

『アルバイト!』

即座に電話が来てこの後めちゃくちゃ怒られた。
俺、嘘は何もついてないのにぃ!!


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