バイト探しは大凶中 (1/1)
新蘭出現注意
微妙に神崎とポアロの続き
いきなりですが、こちらがここ最近の成果です。
花屋。
トラックが突っ込んできて店がなくなる。花屋のおばちゃんとトラック運転手のおっちゃんの間に恋が芽生える。
宅配便。
届け先に死体が混じってたのがトラウマになる。事件に巻き込まれそうになってた猫は助かった。
喫茶店。
死んだはずの公安が通い始めたので辞める。時間差でキャンティがコーヒー頼みに来たから、あの店は二度といかない。実物のキャンティはエロ美しかった。
ライブ会場で機材運搬。
人が死んだ。
犯人にされかけた。
どうも、定職じゃなくともバイト一つくらいはまともに決まってほしい神崎くんです。
大凶さんは俺に働いてほしくないそうです……。
「だ、大丈夫だよ折くん!バイトはいくらでもあるから!今は少し運気がよくないってだけで」
その優しさが良心に染みるんです、高木刑事。気にかけてくれるのはすげーうれしい。でも神崎君、優しくされればされるほど心がじくじく痛むの……。こんなに幸せなのになんでかしら……?
「記憶もすぐ取り戻せるはずさ!」
やめろ血を吐くぞ。
「あはは…………ありがとうございます。でも、なんか体が慣れてるっていうか。あんまりショックとかはないんで大丈夫ですよ。前の俺もこんな感じだったのかも……」
あはは、とちょっとごまかし笑いをすると。
「え!?昔のこと、なにか思い出しそうなのかい!?なんでもいいよ、言って!もしかしたら手がかりになるかも」
ごふっ。
はい、今血を吐いた。血まみれの良心が口からでろでろでてきた。
高木刑事やさしい…………やさしすぎてなんだか…………お腹いたい……。
「あはは…………なんとなくそんな気がしただけなんで…………」
このままだと俺は高木刑事に殺されてしまう。死因は罪悪感だ。優しくされるのは嬉しいがことは時と場合による。これなら赤井さんとコナン君にシルバーブレットサンドされる方がましだ。神崎くん優しくされるより詰問される方が好き。いや今の嘘。やっぱり優しい彼女に甘やかされたい。頑張ったわね……って言って頭撫でてもらいたぁい。
そのためにはまず彼女を養えるだけの財力だ。
くそう仕方ない、この手だけは使いたくなかったが……と俺はとある店のドアを叩いた。
「いらっしゃいませー!!三名様ですね!!!」
「!?」
「あれ……。この前のお兄さん……?」
「あっ。あの細目が犯人っぽかった人じゃない!あれ、でもちょっとかっこいいかも?」
お分かりだろうか。
上から俺、コナン君、エンジェル蘭ちゃん、ラブリー園子ちゃんだ。
俺のチャームポイントのお目目が不評なようでちょっと傷付いたが俺の笑顔は防弾ガラスだ。大丈夫だ、問題ない。
接客inポアロfeat.神崎いぇあ。
どうも、ようやくバイトにありつけた神崎折です。掛け持ちのバイトもぼちぼちさがさなきゃな……。
どうだこの逆転の発想!!どうせ大凶ならはじめから大凶のところに飛び込めばいいじゃない!ここなら安室さんと同僚だから俺なにもしなくても充分貧乏くじ引いてる。
どうぞ、空いてるお席へー。お水ただいまお持ちしまアイタタタタタタ。ちょっとコナン君右肩は事件の後遺症が残ってると言ってるでしょ!?
「何やってんだよ神崎さん!?」
「バイト」
耳元で怒鳴られるとおにーさんこしょばゆい。すげぇなコナン君、一瞬で耳元まで登ってきたぞ。
名探偵少年が落ちないようにとりあえずしゃがむ。
「オメーほんとに正体隠す気あんのか!?なんでわざわざポアロにバイトしに来たんだよ!?」
「だっておにーさんバイトしてお金ためたい」
「他に選べるとこが色々とあっただろ!!」
なかったんです。
選択肢からしてこれしかなかったんです。
「わあああ、ごめんなさい!ちょっとコナン君!!」
マイエンジェル蘭ちゃんが俺からコナン君を引き剥がす。引き剥がされた小学生(中身高校生)はむすっとしていた。
「ははは、コナン君は相変わらず元気だなぁ」
「あ、あれ?えっと、あの…………前、派土さんの事件であった人ですよね?」
コナンくんとこんなに仲良かったっけ?みたいな疑問符を頭に浮かべてる蘭ちゃん。蘭ねーちゃんが見てない間に色々あったんです。俺がシルバーブレットサンドされたりとか俺が不審者につきまとわれたりとか俺が事件に巻き込まれて死にかけたりとか。……俺のすっぴんがコナン君に完全にばれたりとか。
顔バレ身バレダメ絶対。
「神崎さんは新一兄ちゃんの知り合いなんだよ!」
その設定で貫き通すんだなコナン君、アイアイサー。嘘をついてはないよね、嘘は。
俺が新一君を目視したことなんてないけど。
「えっ!?」
「ははは、事件に巻き込まれたときに助けてもらってね」
「神崎さんが米花町に居る間面倒みてあげて、って新一兄ちゃんが!」
「コナン君、俺が面倒みられる側ですか」
「うん!!」
あら元気なお返事。
「だって神崎さんってすごい運悪いし…………」
「大凶です。お願い、ただの不幸で可愛そうな人みたいに言わないでプリーズ」
「あ、あの……」
おずおずと蘭ちゃんに話しかけられた。なんでしょう。そんな不安そうな顔されるとこっちもドキドキしちゃう。
「なんでしょ?」
「あの、新一のやつ…………元気ですか?」
胸に握りこんだ拳をキュッと握って俺に聞く蘭ちゃん。不安そうな顔は俺に対してじゃなくて、新一君のため。どこともしれない場所をほっつき歩いているクールガイのためだ。
ほーんと罪作りな名探偵だこと。
「あ!あの、私アイツの同級生なんですけど!その……最近あんまり顔をみてなくて……」
「蘭は新一のガールフレンドなのよ!」
「ちょっと園子!!そ、そういうのじゃないんです!!ただ、えっと…………」
顔を赤くしながら言われても説得力がないぜお嬢さん。
あー、もう甘酸っぱい。神崎くんそういう高校時代ほしかった。
「大丈夫。君の話は聞いてるよ、毛利蘭ちゃん」
「えっ?し、新一が!?アイツ、なんて言ってました!?」
「それは…………本人の口から聞いた方がいいな」
「まさか、アイツ…………悪口!?」
「あはは!ちがうちがう。安心して、君はバッチリ愛されてるよ」
「へえーーーぇ!あの推理オタクでものろけることあるのね!!」
「の、のろけって!ほんと、そういうのじゃないって……!」
ほんとごちそうさまです。
悪口とか言いつつ顔が赤いんだから蘭ちゃんったら誤魔化せてない。
どうだいちゃいちゃさせてやったぞ。新一君ここにいないけど。と、ちっちゃくなってしまった高校生探偵の方にウィンクを飛ばせば。
何故かむすっとした顔のコナン君が。なにが不満だというのだ。頬を染めながらむすっとするとかツンデレか。そうかツンデレだな?今日から高校生探偵工藤新一はツンデレ――
「へぇ、あの工藤新一と知り合いとは…………」
「――――――」
――――ヒッ。
「僕も一度会ってみたいと思っているんですよ……噂の高校生探偵に…………」
「安室さん」
「はい」
たぶん今の俺は真顔をしている。
目も据わっているかもしれない。でも誤解しないでくれ。怒ってるわけじゃないんだ。
「真後ろから話しかけられると神崎くんすげぇびっくりする」
心臓がドキドキしすぎて表情筋動かないだけなんだ。背後から迫るバーボン怖い。組織の探り屋だからか?背後からこっそり探ってくんのバーボンこわいバーボンこわいバーボンこわい。
人当たりの良さそうな笑顔が逆に怖いんだって。
「それは失礼しました。なにやら面白そうな話をしていたので、つい」
「安室さんなんなのアサシンクラスなの」
「殺し屋(アサシン)?いえ、僕は探偵ですよ」
「どちらにせよ気配遮断持ちだろちくしょう」
「神崎さんってたまにわけわかんないこと言うよね……」
この世に約束された勝利の剣の物語はないというのか。あっても探偵たちは知らなさそうだな。
「ははは!さあ、お仕事、お仕事ー!蘭ちゃんたちも座った、座った!おにーさんお水持ってくるね!」
言い捨てて厨房に逃げ込む。これで安室透からも逃げ、られませんよね。行き先同じですよね。同僚なんだから。
ピッチャーから水を注ぎながら安室さんと肩を並べる。すげぇ不思議な感覚だな、これ。
「まさか君と同僚になるとは思いませんでしたよ…………」
「俺もびっくりだよ」
ねぇ聞いて、聞いて。俺いま好きだった漫画のキャラと一緒にバイトしてるの。びっくりしない?
みんなだってある日勉強机の引き出しから見覚えのある青い狸的な猫型ロボットでてきたらびっくりするだろ?この場合、猫型ロボットさんが自分のバイト先にどら焼き買いに来た感じだぜ?
びっくりするだろ?
「まあでも、仲良くできたらいいなーとは思ってるけど」
「おや、意外ですね」
「そう?俺安室さんのことけっこう好きよ?」
「てっきり君は僕のことが苦手だと思っていましたから…………」
「うわぁ。ズバッて言うねー」
苦手ですけどなにか?
ぐいぐい来られると弱いんだよ俺……。安室透、不審者に対する攻めの姿勢が強すぎるって。
「安室さんが同僚になることに対しては……嬉しさ半分、戸惑いと切なさ二割かなー?」
「三割残っていますよ」
「あはははは!」
そこはいつか謎が暴かれるんじゃないかっていうドキドキ感だな。
「そうですね…………僕としても仲良くできればと思っていますよ……」
やだ神崎君バーボンに狙われちゃってる。
まだベルモットおねーさまに狙われた方が俺嬉しいわぁ。
「何かあったらいつでも言ってくださいね…………記憶をなくした状態だと君も大変だろうし」
「はーい。頼りしてますよ、安室先輩」
神崎君は頼れるちょっと怖い先輩をゲットした!
…………盗聴器とか仕掛けられないように気を付けとこ。
「それと、ピッチャーの持ち方間違っていますよ。それだとこぼしやすくなる」
……あと、この先輩ちょっと口うるさいかもしれない。
←前のページへ / 次のページへ→
もくじ